地上最も過激な格闘技 ミャンマーラウェイを攻略せよ!

地上最も過激な格闘技 ミャンマーラウェイを攻略せよ![特別座談会]

“地球上で最も過激な格闘技”と言われるミャンマーの格闘技ラウェイ。グローブではなくバンテージのみを巻き、パンチ、キック、ヒジ打ち、ヒザ蹴りに加え、頭突きや投げ技、立ったままの関節技もありの過激なルールが特徴だ。もしラウェイと空手が闘った場合、どのような攻略法があるのか? 禅道会の小沢隆代表が、実際に王者と対決した村井義治、プロモーターとして関わった羽山威行、第2回大会で弟子が出場する宮崎文洋を招集し、ラウェイ攻略法を話し合った(敬称略)。

――ミャンマーラウェイの歴史を教えてください。
小沢ミャンマーラウェイは、その名の通り、ミャンマー国で生まれた格闘技です。歴史は古く1000年前までさかのぼります。
「ラ」は拳を意味し、「ウェイ」は戦いを意味します。
次のようなルールで試合が行われます。
①バンテージを着用
②パンチ、キック、ヒジ打ち、ヒザ蹴り
③頭突きや投げ技、立ったままの関節と絞め技、脊髄への攻撃もあり
④ダウンカウントはなく、ノックアウト以外は引き分け
そのため、本場ではどちらかがギブアップしない限り、試合を終わらせないこともよくあるそうです。
ラウェイは“地球上で最も過激な格闘技”と言われることもありますが、本場では子供や女子のクラスもあります。
――日本の格闘技界との関係は?
羽山(国際FSA拳真館館長)2000年代に入って交流が始まりました。
和術慧舟會西良典総帥は、主催興行「クシマズファイト」の中でラウェイルールでの試合を行いました。以降、キックボクサーの石黒竜也、私の弟子である佐藤真之などがラウェイルールでミャンマー人選手と試合をしました。
村井義治(理心塾塾長)私も2005年にプロ復帰してから3~4年後に(39歳)、ミャンマーラウェイライト級最強の王者と謳われたソーゼレイと死闘を演じました。ハイキックでダウンを奪いました。

――2016年の10月27日(木)東京・後楽園ホールで初となる大会『Lethwei GP in Japan 2016』が開催されたそうですが…。
宮崎(大誠館)ファーストオンステージという会社が、ミャンマー人以外で初の「ラウェイプロモーターライセンス Grande-A」を取得しました。
これにより、日本国内をはじめ世界中でラウェイ興行を主催することが可能になりました。『Lethwei GP in Japan 2016』は日本初の MTBF(Myanmar Traditional Boxing Federation)公認大会として行われました。
2017年2月16日(木)東京・後楽園ホールで第2回ラウェイ日本大会が開催されます(全6試合を予定)。
――日本でも本場と同じ同様のルールで行われるのですか?
村井次のような直輸入のルールで行われました。
  • 3分5R、インターバル2分、判定なし(時間切れの場合は引き分け。ダウン数やダメージは無関係)
  • グローブは装着せず、バンテージのみで試合を行う。
  • 肘打ち、頭突き、投げ、関節技が認められる。絞め技は8月のルール改定により反則
  • 故意ではなく流れの中で蹴りが金的に当たってしまった場合は有効打となり試合は続行される。
  • 1Rで3回ダウン、試合を通し合計4回のダウンでTKO。
  • ダウン時の10カウントは1カウントあたり2秒で計測。7カウント以内に戦う意志を示せばダウンとならない。
  • 1~4Rの試合中、劣勢または失神などが起こった場合選手またはセコンドがレフェリーに「タイム」を要請し「スペシャルタイム」(2分間)の休息が許される。試合中一度のみ行使できる。
  • 選手が流血した場合のレフェリーストップ、ドクターストップもある。
  • 試合前には「ヤイ」と呼ばれるダンスを踊り、試合後にも勝者が踊る。引き分けの場合は両者が踊る。
――2月に第二回大会が開催されるそうですが、皆さんの関係者も出場するのですか?
宮崎私の弟子である山本祐希(30歳/173センチ、63キロ)が出場します。ムエタイに短期留学した経験があります。
本場のラウェイルールは初体験ですが、向こうの技術に追随すると飲み込まれてしまうので、フルコンタクト空手で培った技術をベースに勝利を掴みたいと考えています。
――会場ではどのような雰囲気なのですか?
小沢前大会では、試合中もミャンマー語のDJがいて、「タオー」とか「ハヤー」と叫んでいました。
しかし、私には何のことやら(笑)。会場は満員でしたので、大盛り上がりでした。

小沢先生が考える攻略法

――では本題に入ります。ラウェイはどのように攻略すれば良いでしょうか?
小沢私の分析によると、仏教を背景としたラウェイルールをいかに理解するかが鍵となります。
例えば、ラウェイではダウンしたら、10カウントの最中に3分間の休憩を請求でき、十分に回復してから、勝利することも可能です。
これには仏教ならではの慈愛の精神を見いだすことができます。
また選手が非常に真面目で、KO以外は全て引き分けですが、最初から引き分けを狙う選手はいませんし、試合後のコメントで「目標は解脱」と語ったりする選手もいます。
仏教の延長線上にある美意識、道徳観、暗黙のルールを理解した上でリングに上がらなければ、文化性の違いに戸惑い、後れをとる可能性があります。
――技術的な攻略法は?
小沢私は3つの攻略法を考えています。

①投げ

投げも認められているのですが、接近してもつれた場合にのみ投げに行く感じですね。
ルールの中にあるだけと感じていますので、私はそこに勝機があると思います。
例えば、前半は打ち合わず、投げに徹して、相手の平衡感覚、スタミナを奪っていきます。そして後半は打撃で攻め続ける作戦を考えています。
投げに関しては、浴びせるような投げ(写真A1~6参照)。

大外刈りからの浴びせ倒し(写真A7~9参照)や外掛けでダメージを与えます。
弟子には怪我させたくないので、相手と真っ正面から打ち合うのではなく、サイドに入ってからの裏投げなども使えると考えています(写真A10参照)。
事実、取材中に私の浴びせ倒しを受けた弟子は肩を激しく痛めてしまいました(写真A11参照)。

②ボディ打ち

顔面をバンテージのみで叩き合うと、拳を痛めるリスクが多いため、ボディ打ちも有効と捉えています。
ボディ打ちはラウェイも発達しています。
フルコンタクト空手の競技でもよく用いられる打ち方が活かせると思います。
当然、ボディを打たれれば、呼吸が乱れ、スタミナを奪うことも出来ます。ボディ打ちを有効に使えば、頭突きも入ります。

③ローキック

ラウェイの選手はローキックおよびその防御があまり上手ではないと感じました。ローキックを足がかりとして、投げや他の打撃につなげる使い方も出来ると思います。

④掌底

球面体をいかに上手く叩けるかを考えると掌底は有効ですし、掌を緩く握って首を狙って叩きたいですね(写真A12参照)。首相撲になったら、掌底をボディに当て密着した状態から浸透させるように打つことも可能です。

宮崎先生が考える攻略法

――宮崎先生が考える攻略法は?
宮崎ロングレンジで戦うのは不利と考えています。そこで接近戦で勝負ということになりますが、ボディに関してはフルコンの技術を活かすことが出来ると思います。
カードをしっかり固めてから、脇を絞りながら小さく打っていきます。
具体的には、接近戦における頭突きからのショートボディですね(写真B1~3参照)。

死角からのレバー打ち(写真B4参照)、縦拳(写真B5参照)も二人で練習しています。
さらにそこからの脛ごと落としていくローキックも有効だと考えています(写真B6参照)。

頭突きは押し負けないことを前提とし、二人でスーパーセーフを着用し、三種類を練習しています。
(1)ストレート(写真B7~8参照)

(2)フック(写真B9~10参照)

(3)アッパー(写真B11~12参照)

下半身のバネを使い、こめかみや顎を的確に狙うことがポイントとなります。

羽山先生が考える攻略法

――羽山先生は?

羽山一番固い頭で相手のパンチを受け、拳に大きなダメージを与えることで(写真C1参照)、その後の試合展開を優位に進めることができます。
相手がバンテージを薄く巻いて攻撃力を重視しているのか、厚く巻いて拳を守るのか見極める必要がありますが、タイミングによっては、骨折させたり、腫れ上がらせたりすることが出来ます。

また、ノールックで防御しながら、耳の横を通る感じでカウンターのタイミングで打てば、相手は倒れます(写真C2参照)。水泳の飛び込みと同じイメージで顎を引いてください(写真C3~4参照)。

あとは拳を痛めないように縦拳で上から下に打ちます(写真C5~7参照)。ラウェイはグローブの間合いより狭く、狙う場所が異なります。私は拳を痛めない首筋などの急所を狙うべきと考えています。
接近戦で頭を三合という急所にゴリゴリとこすり合わせる(写真C8参照)などの戦法が有効だと思います。

村井先生が考える攻略法

――実際に闘ったことのある村井先生のご意見は?
村井私が十数年前にミャンマーラウェイライト級王者のソーゼレイと闘った時のことです。
向き合った瞬間、全ての攻撃が入る、絶対に勝つなと思いました。
フックにしても脇が空いているし、前のめりに攻撃してくる以外に気を付ける点もありませんでした。
対策としては、猪突猛進でガーッと前へ出てくるので、それをいかに止めるか、いなすのかということ。
反撃へと移る場合は、打ち合うことに誇りを持ち、タフなミャンマー人でも上段蹴りや膝蹴りがまともに入れば、立ち上がってこれません。特に私が闘っていた時代は、サイドに入って、上段蹴りをする選手が少なく慣れていないと感じました。
もし基本的な技術・戦略に進歩が見られなければ、蹴らずに膝の脱力で体を沈め、アッパーからのハイキック(写真D1~5参照)なども通用すると思いますし、相手と自分が重なった刹那、一撃で相手を葬り去る技術があれば怖くはないと思います。

――村井先生は相手の意識を一瞬で断ち切るような打撃論をお持ちだと聞きましたが…。
村井私の打撃は次の二点を組み合わせます。
①ムチミ(鞭身・餅身)/突きを放った後、腰を逆方向に切り返し、ブレーキをかけること(写真E1~4はフックの例)。
股関節から背中までの部位が鞭のグリップとなり、ここからエネルギーを発生させて、攻撃を出します。
そして、腰を逆方向に切り返し、急ブレーキをかけることで最後に拳がぐっと中に入っていきます。

②チンクチ(筋骨)/当たった瞬間、脇を締めること。ストレートの場合、肘は下になる(写真E5参照)。
チンクチを行うことで、体が一つの塊となり、突きの浸透力が増します。
蹴りに関しても腰(股関節)を開いて、閉じた後に背足を返すこともチンクチの一つです(写真E6~9参照)。これによって、当たった後、さらに中に入っていくのが本当のフォロースルーです。

初心者は大きく、ゆっくりと体の中の動きを意識しながら動くとよいでしょう。
ゆっくり行えば、腰は回すのではなく、股関節を入れることだとか、突きの軌道はクロスさせること、最終的に突きや蹴り先(親指の線)が帯と重なることなどが身についていきます。
連打に関していえば、開いて、閉じる、開いて、閉じるの繰り返しです。一発放つごとに体の中でS字のようなラインができます(左フックだったら、右足から左手のラインでつくる)。連続で攻撃すると、S字がどんどんつくられて、8の字の形になり、永久運動のように続いていきます。打ったときには次の準備が出来ているため、手打ちにもなりません。
身体動作について述べさせていただきましたが、これは氷山の一角です。また別の機会にきちんと解説したいと思います。
――最後に小沢代表から一言お願いします。
小沢私も20年前ラウェイに出てみたいと思ったことがありました。
当時はバンテージを巻いただけの打撃と、長めな2分間のインターバルが攻略の鍵だと思ったことを覚えています。
額で拳を受ける場面を想定し、皮膚が切り裂かれたらどうなるのか?
ボクシング同様に止血はしますが、ボクシングでは止めるようなキズでも試合を止めないと感じました。
20年の時を経て、その時に考えた戦略が今回試されるとは思いませんでした。
総合とは違う視点で、武道の実戦性、護身性を考えるのによい機会だと思っています。
私も時間があれば、ミャンマーに飛んで、特別レポートをしてきたいと思います。また4月の3回大会は今回の座談会に参加した先生のお弟子さんも複数出場するので、ぜひ会場へ応援に来てください!

小沢隆

宮崎文洋

羽山威行

村井義治