ウクライナ大会レポート ~パート2~最終章

05 10月 2019

4月18日のイヴァーノフランキウシク道場の講習会が大盛況であったことは前述の通りです。我々に対する熱い歓迎は日本人チームへの徹底したサポートにも現れていました。
ウクライナの国際空港に到着したときから、空港に戻ってくるまでの約2,000キロの殆どの行程を運転手になってくれ、不慣れなレストランでは食べやすいもの美味しいものを小まめに注文してくれたりと、ウクライナ支部の一般部稽古生やジュニアの親達がサポーターとなって親身にあれこれと我々が困らないようにサポートしてくれました。
ウクライナ語ができない我々は、なんとか片言の英語で意思疏通を図ろうと奮闘したものの小沢首席師範の訓話や技術指導には耐えません。元ウクライナの日本領事館通訳者であったヴァレリアさんの存在なくしてはこの大会も講習会も成功には至らなかったはずです。薙刀有段者の彼女の流暢な通訳サポートのお陰で全行程を無事完了できたことは、感謝をもってここに記述しておきたいと思います。

さて、最西部の都市から翌日19日には空港方向にトンボ返りの感じで、ヴィーンヌイツァの都市を目指しました。再び陸路10時間。この都市には支部のメイン道場があり20日はジュニアと一般部の2回の講習会です。
街並みは古いヨーロッパ風ではありますが、全体に高いビルはなく建物も散在しており歩く人もバンコクや東京から見れば過疎の田舎町のようでした。冬季のスパイクタイヤで傷んだのか道路は至るところ穴だらけでぬかるみも所々にあり粉塵が舞っていました。

セミナー会場は非常に大きな体育館でした。
我々が到着したときには、建物の外は既に大勢の人だかり。道着をきた子供たちもたくさん目につきました。
館内に入ると数百人のひと、ひと、ひと。人息で蒸せるような熱気が大きな空間に充満していました。

ジュニア向け講習会には4、500人以上が参加したでしょうか。全員が声を殺し緊張した面持ちで我々の入場を見守っていました。館内の高いところに見学席が三方ありそこにはジュニアの家族と思われる人達で埋め尽くされていました。
講習会は、小沢首席師範の訓示に続き、大畑支部長号令による基本移動稽古。その後、小沢首席師範の指導で投げ技、寝技を行いました。
あとの一般部では、西川支部長による礼法指導もありました。
イヴァーノフランキウシクの道場生同様、ここヴィーンヌイツァでもジュニアも一般稽古生も指導の細部にわたるまでを一瞬たりとも見逃しはしないという真剣な取り組み姿勢でした。その熱意に呼応してか指導する側もいっそう熱を込め、合計5時間の講習会はあっという間に終了した感がありました。
ジュニア講習会のあと昼食を挟み一般部の講習会がありました。そこにジュニアの多くが当然のような態度で引き続き参加したのには少々驚きがありました。
二度の講習会を済ませると、先の日と同じように写真撮影とサイン会となりました。最後の一人が帰るまで我々が誠意をもって対応したのはもちろんのことです。

番外編となりますが、長時間移動後であろうが講習会後であろうが、毎晩イゴールウクライナ支部長をはじめボランティアスタッフとの会食はウクライナの名酒ウオッカと豚肉、チーズ、ポテト主体の料理で盛大に盛り上がりました。同じ武道精神を禅道会のもとに共有するひとつの家族のように友情を確かめ合う喜びはかけがえのない機会でした。遠いウクライナにこんなに近しい存在を得た喜びは、私一人の感慨ではありません。海外支部を開拓しそこへ首席師範や支部長たち指導者が出向いて地を固める。大願が成就した全員の喜びです。水のようにウオッカを飲み干す巨漢ウクライナチームに対抗する日本チームはわずかに首席師範と西川支部長の二人でしたがその暖かな攻防を脇で眺めながら禅道会海外支部のこれからの発展を確信した下戸のわたくし。こればかりは鍛練できません。

21日、日曜日はウクライナ支部主催の初のヨーロッパ大会と銘打って開催しました。当初は、ベルラ―シ、スペイン、イタリアからの参加も見込んでいましたが最終的にはウクライナメンバーと日本からのジュニア選抜メンバーとなりました。
まず印象に強く残ったのは、大会運営が非常に円滑に行われたことです。見事というほかありません。参加賞はじめ入賞者への各種トロフィー、バッジ、認定書なども工夫がほどこされており特にジュニアにはモチベーションが高まる魅力のあるものに映りました。参加選手はほとんどの者が試合慣れしている感じで動きは速く力強く、技も多彩という好印象でした。日本との違いは、試合運びに人に見せる(魅せる)要素が多分にあったことでしょうか。特に派手な大技を好む傾向も見られました。また、全体的にジュニアの体格はがっしりしており戦う姿勢は、15世にこの地に出現した武人の共同体「コサック」を彷彿とさせる勇ましさがありました。
その中で前半冒頭に書きましたとおり、日本メンバーは、各階級において存分にその実力見せつけるところとなり、日本本家への畏怖は大いに増したものと思います。

来年、10月には東京で初の世界大会があります。
現時点では台湾、ウクライナ、ロシア、イタリアから精鋭が腕試しに来日します。くわえてスペイン、ネパール、ラトビアからも参加が期待されます。
オリンピックで世界の注目が集まる東京に、禅道会世界大会の初王者を目指して各国選手がしのぎを削る。その起爆剤として今回のウクライナ主催第一回ヨーロッパ選手権大会が成功裏に終わったことは大変意義深いものと感じております。

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